リアクトルとは

リアクトルは、電気回路において、インダクタンス(コイル)を利用して電流の変化に抵抗する電気部品です。インダクタンスとは、コイル内に蓄えられる磁気エネルギーの能力を指し、この性質を利用して電流の変化率を制御します。リアクトルは、電源からの直接的な電流の流れを妨げるのではなく、電流の急激な変化に対して抵抗することによって、電気系統の安定性を高める役割を果たします。

リアクトルの動作原理

リアクトルの基本原理は、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいています。電流がコイルを流れるとき、その周囲に磁場が生成されます。電流が変化すると、磁場も変化し、この変化する磁場がコイル内に逆起電力(誘導電圧)を生じさせます。この逆起電力は、電流の変化に対して抵抗する方向に作用します。すなわち、電流の増加を試みるときにはそれを減少させようとし、電流の減少を試みるときにはそれを増加させようとします。

リアクトルの用途

リアクトルは、その電流制御能力により、以下のような様々な用途に使用されます:

  • 電力系統における電圧調整: 電力系統において、リアクトルは電圧の変動を抑え、電力の流れを安定させるために使用されます。
  • ハーモニックフィルタリング: 不要な高周波数の電流成分(ハーモニック)を減少させるために、特定の周波数で高いインピーダンスを提供します。
  • 過電流保護: 電力回路や電子機器において、短絡や過負荷時に電流の急激な増加を抑えるために使用されます。
  • モーターの起動電流制御: 大型の電動機を起動する際に、起動電流を制限し、電源系統への衝撃を軽減します。
  • 共振回路の構成要素: ラジオやテレビのチューナーなど、特定の周波数を選択するための共振回路に使用されます。

リアクトルの種類

リアクトルには、主に以下のような種類があります:

  • 固定リアクトル: インダクタンス値が固定されているリアクトルで、一般的な用途に使用されます。
  • 可変リアクトル: インダクタンス値を調整可能なリアクトルで、特定の条件下での精密な制御が必要な場合に使用されます。

リアクトルは、その電流制御能力により、電力系統の安定化、電子機器の保護、信号の精密な制御など、幅広い分野で重要な役割を担っています。