高調波対策を実装するには? 発生原因と測定方法を知ろう

高調波は工業製品や家電製品の性能に悪影響を及ぼすため、何らかの抑制策を講じる必要があります。効果的な高調波対策を実装するには、発生原因と測定方法を理解することが重要です。この記事では、高調波の基礎知識や発生する原因、測定方法を踏まえ、適切な対策方法について解説します。

高調波とは

高調波対策
高調波対策2

高調波は、電源系統において基本周波数の整数倍となる波を指します。工業製品や家電製品などの電気機器が、電力を使用する過程で発生するものです。一般的な電源の周波数は50Hzまたは60Hzですが、高調波はこの2倍、3倍(2次、3次)と大きくなります。

高調波の問題点は、電気システムや機器の効率を低下させたり、故障の原因となったりすることです。また、過大電流によって発熱量が増大し、変圧器やケーブルなどの部品寿命を縮めます。感度の高い電子機器の場合は、高調波が原因で誤動作やデータ損失を引き起こす可能性もあります。

高調波のレベルが高いと電力系統の安定性が損なわれ、電気設備全体が不安定になります。高調波を適切に管理できるように対策を講じることは、電力系統の健全性を保つために非常に重要です。

高調波が発生する原因

高調波の発生原因は、主に非線形負荷によるものです。非線形負荷とは、電源線側から見て正弦波でない電流が流れる機器や電気設備のことで、回路内で電流のスイッチを急速に切り替えることで高調波を生じます。インバーター内のコンバータ回路、調光機器、医療機器、スイッチング電源、大型電子機器などが高調波の典型的な発生源です。

正弦波の交流電流は、コンバータ回路を通過すると波形が乱れます。これは、コンバータ回路内の3相の半導体が電流を流したり流さなかったりするためです。結果として高い周波数を含む電流となり、高調波を発生してしまうというメカニズムです。

工業施設やオフィスビルなどで使用される大型の機器および機械は、ほとんどが高調波の発生源となりえます。これらの機器は大電流を必要とし、起動時や動作時に高調波で電源系統に大きな影響を与えることがあります。例えば、エレベータやエアコンの大型コンプレッサー、電気溶接機などです。

また、電力系統自体の特性も高調波の発生に影響を与えます。系統内のインピーダンスや構成により、高調波の伝搬や増幅が異なります。高調波対策を検討する際には、これらの要因を全体的に考慮することが重要です。

高調波の測定方法

高調波の測定は、具体的な対策の検討と電力システムの健全性維持に重要です。ここでは、高調波のレベルや特性を正確に捉えるための、基本原理や測定装置を解説します。

高調波測定の基本原理

高調波測定の基本原理は、電源系統における電圧と電流の周波数成分を分析することです。この分析の際、周期性のある非正弦波にはフーリエ級数展開、周期性のない正弦波にはフーリエ変換といった数学的手法が用いられます。フーリエ変換によって、電圧や電流の波形を基本周波数とその倍数の高調波成分に分解でき、各高調波成分の振幅や位相を解明することが可能です。ただし、正確なデータを得るためには、測定時のノイズや干渉を避ける必要があります。

高調波の測定装置

高調波の測定には、パワーアナライザやスペクトラムアナライザが使用されます。パワーアナライザは電力の質を測定するための装置で、高調波以外のパラメーターにも対応します。一方、スペクトラムアナライザは、高調波の周波数分析が可能です。高調波の発生源やレベルを正確に把握することで、効果的な対策を検討するのに役立ちます。

高調波を抑制する対策

高調波の抑制対策は、電力システムの効率を高め、機器の性能と安定性を維持し、寿命を延ばすのに重要です。高調波の測定と分析を踏まえた上で、最適な技術や装置を選択し、効果的な対策をとりましょう。

抑制技術の種類と特徴

一般的な高調波抑制対策としては、インバータへの交流リアクトルの接続、または進相コンデンサと直列リアクトルの併用で電源波形を調整する方法があります。高調波をパッシブフィルタで吸収する、あるいはアクティブフィルタで抑制する方法も有効です。また、高力率コンバータ(PWMコンバータ)も、インバータで生じる高調波を大幅に減らすことができます。これらの対策によって、高調波が電力系統や電気機器に与える影響を低減します​​。

高調波対策の実装例

高調波の発生源から他の施設へ高調波が伝わらないように、アクティブフィルタで相殺するような実装例があります。高周波数を含む乱れた波形を、綺麗な正弦波に調整することが可能です。