スイッチングトランス(初級編) 〜スイッチングトランスの役割と設計プロセス〜
はじめに
私たちの生活を支えるあらゆる電気機器に不可欠な「トランス(変圧器)」。その中でも、電源回路において高効率な電力変換を担う「スイッチングトランス」は、電子機器の小型化・高性能化に大きく貢献しています。今回は、「トランス設計の基礎」について分かりやすく解説します。
スイッチングトランスとは?
トランスの基本機能
スイッチングトランスには、主に次の3つの役割があります。
- 絶縁:入力(1次側)と出力(2次側)を電気的に分離し、安全性を確保
- 電圧変換:巻数比に応じて昇圧・降圧を行う
- エネルギー伝送:電気→磁気→再び電気へとエネルギーを移動させる
このように、スイッチングトランスは電力変換の心臓部として重要な役割を担っています。

構成要素の概要
トランスは複数の部品から構成されており、それぞれが重要な機能を果たします。
- コア(Core):フェライト素材を使用し、磁束のループを形成
- ボビン(Bobbin):巻線を支える絶縁構造体
- 巻線(Wire):電圧変換の実体部分。UEWやリッツ線が使われます
- 絶縁材・含浸剤・接着剤:安全性や機械的強度、耐湿性の向上に貢献
さらに、構成要素は「Bill of Materials(部品表)」と製造工程に密接に関連しており、設計段階から量産性を考慮する必要があります。
設計プロセスと仕様定義
設計の流れ
スイッチングトランスの設計は以下のようなステップで進められます:
- 電源仕様の確認・・・入力電圧・出力電圧・電流・スイッチング周波数などを把握
- 巻数比やインダクタンスの計算
- 材料の選定(コア・ボビン・巻線など)
- トランスの仕様定義書作成
これにより、電源回路全体の仕様に適したトランスが明確になります。

回路方式とトランスの関係
フライバック方式やLLC共振方式、フォワード方式、ブリッジ方式など、トランスの使用法は回路構成により異なります。

設計時におけるチェックポイント
主に、以下のようなポイントを抑える必要があります。
- 案件情報の確認:仕様漏れ防止
- 電源仕様の精査:電源方式・入出力・周波数などの確認
- トランス要求の明確化:必要な絶縁耐圧や巻数比など
- 部品選定の精緻化:より限定的な仕様への対応
おわりに
トランス設計は複雑な技術のように見えますが、その基礎をしっかりと理解することで、より良い製品設計につながります。今後も引き続き、設計現場に役立つ情報を発信してまいります。