リアクトルとは?電源システムにおける役割について
リアクトルは電気回路における受動素子の一つであり、主に電流の制御や高調波の抑制といった役割を果たしています。特に電源システムやインバータ回路など、安定した電流供給が求められる場面では欠かせない存在です。本記事では、リアクトルの基本的な概念、種類と特徴、電源システムにおける重要性、そして実践的な応用例について詳しく解説します。
1. リアクトルの基本概念と仕組み
リアクトルは、電気回路内でインダクタンス(自己誘導)特性を持ち、電流の変動を緩和する働きをします。これは、リアクトルが電流の急激な変化に抵抗を示すためです。この特性を利用して、電流の平滑化や高調波の抑制を行い、電源品質の向上に大きく貢献しています。近年の電子機器の高度化に伴い、電源の安定供給やノイズ抑制が重要視される中で、リアクトルの役割はますます重要性を増しています。
- 動作原理:リアクトルの動作は、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいています。コイル状に巻かれた導線に電流が流れると、周囲に磁場が形成され、この磁場の変化によって逆起電力が発生します。これにより、急激な電流の変動が緩和され、安定した電流供給が可能になります。
- インダクタンスの特性と電流制御:インダクタンスの特性により、リアクトルは大電流が流れる回路や、高速なスイッチング動作が行われる機器において重要な役割を果たします。このような機器では、電流が急激に変化することが多く、その変動を抑制するためにリアクトルが使用されます。
2. リアクトルの種類と特徴
リアクトルには様々な種類があり、それぞれ異なる用途に応じて活用されています。
- DCリアクトル:直流電力システムで電流の平滑化を目的として使用されるインダクタンス素子で、インバータやコンバータの直流側に設置され、電流の変動を抑え、機器の安定動作と電力品質の向上に寄与します。また、直流リンクコンデンサへの過大な電流を防ぐことで、コンデンサの寿命延長にも貢献します。
- ACリアクトル:交流電力システム内で突入電流の保護や高周波の抑制および力率改善、電圧の変動吸収、さらには電流と電圧の位相差を調整するインダクタンス素子です。インバータの出力波形を平滑化し、モーターや他の負荷機器の動作を安定させるために使用され、システムの信頼性と効率を向上させる重要な役割を果たします。
- 高周波リアクトル:高周波回路やパワーエレクトロニクスで使用され、ノイズフィルタリング、電力変換、共振回路など、力率改善回路用のコイル(リアクトル)として利用されます。磁気コアや巻線の設計が高周波に最適化されており、機器の動作を安定させ、ノイズの低減や電力変換効率の向上に寄与します。
- 直列リアクトル:電力システムにおいて、電流制限や高調波抑制、突入電流の抑制などを目的として、電流が流れる回路に直列に接続されるインダクタンス素子です。主に変圧器やコンデンサバンクの保護に使われ、電圧の急激な変動を抑え、電力システムの安定性を向上させます。また、高調波を減少させることで、電力品質の向上にも寄与します。
3. 電源システムにおけるリアクトルの重要性
リアクトルは、電源システムにおいて以下のような役割を果たし、システム全体の安定性と信頼性を向上させるために不可欠です。
- 電流の平滑化と安定化:リアクトルは、電流の脈動を抑制し、安定した電流供給を可能にします。これにより、機器の誤動作を防止し、電源品質を向上させ、システム全体の信頼性を高める効果があります。
- 突入電流の抑制:大型の電気機器を起動する際に発生する突入電流は、システムに大きな負荷をかけ、他の機器に悪影響を及ぼす可能性があります。リアクトルは、この突入電流を効果的に抑制し、機器の保護とシステム全体の安定性向上に寄与します。
- 電源品質向上:リアクトルによる電源品質の向上は、電流変動の緩和、高調波の抑制、電圧変動の安定化といったメカニズムで実現されます。これにより、システムの信頼性が向上し、電源供給の効率性も向上します。
4. 高調波対策とリアクトルの活用
電気システムにおける高調波は、機器の誤動作や故障、電力損失の増加、通信機器への干渉など、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。リアクトルは、高調波に対して高いインピーダンスを示し、高調波電流を効果的に抑制することができます。
リアクトルを使用することで、電力システム全体の電力品質が向上し、機器の寿命延長にもつながります。また、高調波の影響を抑えることは、システムのエネルギー効率を向上させる効果もあり、経済的なメリットも得られます。
5. インバータ回路でのリアクトル応用
インバータ回路では、リアクトルが重要な役割を果たしています。インバータシステムの入力側にリアクトルを設置することで、高調波の抑制や突入電流の緩和が可能になります。また、出力側にリアクトルを配置することで、電流の平滑化やノイズの低減が図られ、システム全体の効率を向上させることができます。
効率的な運用には、リアクトルの容量設計や設置場所の最適化、周辺機器との整合性を確保し、定期的なメンテナンスが求められます。
6. トランスとリアクトルの違いを理解する
リアクトルとトランスは一見似た構造を持ちますが、その機能と役割には明確な違いがあります。トランスは主に電圧変換を目的とした部品であり、一次巻線と二次巻線から成り立っています。一方、リアクトルは単一の巻線で構成され、電流の制御や高調波の抑制に特化しています。
具体的な違いとして、トランスは電圧変換と絶縁を行う一方で、リアクトルは電流の制御や高調波の抑制を行います。また、トランスは主に鉄心構造であるのに対し、リアクトルには空芯構造や鉄心構造のものがあり、用途に応じて選定されます。
7. リアクトル選定のポイントと活用事例
リアクトルを選定する際には、以下の点を考慮する必要があります。
- 必要なインダクタンス値:電流の平滑化や高調波の抑制に適したインダクタンス値を選定します。
- 定格電流:使用するシステムの電流に適合したものを選ぶことで、機器の長寿命化を図ります。
- 周囲温度条件:設置場所の環境に応じて耐熱性や放熱性の高いものを選定することが重要です。
- 設置スペース:リアクトルのサイズも選定時に考慮し、限られたスペースに適した形状のものを選びます。
- コスト効果:システム全体のコストパフォーマンスを考え、長期的な視点での選定が求められます。
サンシン電気では力率改善回路に着目し、「2相インターリーブ型PFCコンバータ用(高周波)リアクトル」をご用意しています。2つ以上のリアクトルを統合し1コア化することで、コア内で磁束が相殺され低ノイズ化を実現できます。また、出力平滑コンデンサの容量を低減可能です。コア費用削減によりコスト低減を実現するとともに、トータルコアサイズを大幅に縮小します。
2相リンクトランスの活用事例としては、2相インターリーブ方式PFC回路が挙げられます。特徴は、以下の通りです。
・高効率、ハイパワー電源向き
・ピーク電流、リップル電流が低い
・(平滑)コンデンサ容量を小さく抑えることが可能
LCD TV等の薄型・ハイパワーが要求される電源に有効です。
まとめ
リアクトルは現代の電力システムにおいて不可欠な存在であり、電流の制御や高調波の抑制を通じて、電源品質の向上と機器の保護に大きく貢献しています。適切な選定と運用を行うことで、システムの信頼性向上とコスト削減を実現できます。
電子機器の高度化が進む中、リアクトルの重要性はさらに高まることが予想されます。基本的な原理から実践的な応用まで、正しい知識を持って活用することが、より良い電源システムの構築に繋がります。