スイッチング電源設計基礎──設計者の視点から見える“電源設計の奥深さ”

現代のあらゆる電子機器には、安定して動作させるための「電源」が欠かせません。
その中でも、軽量・高効率・高性能を実現するスイッチング電源は、産業機器から家電、IT機器まで幅広く利用されています。

本コラムでは、スイッチング電源設計の基礎と、設計者がどのような視点で部品や方式を選んでいるのかをご紹介します。


1. スイッチング電源とは?

スイッチング電源の種類は、以下のように整理することができます。

電源には「ドロッパ方式」と「スイッチング方式」があります。

  • ドロッパ方式
     構成がシンプルでノイズが少ない一方、発熱が多く効率はあまり高くありません。
  • スイッチング方式
     高速でオン/オフを切り替えて電圧を変換するため、
     高効率・小型・軽量というメリットがあり、今の主流となっています。

2. スイッチング電源を構成する主要ブロック

スイッチング電源は複数の回路ブロックから構成され、それぞれが重要な働きを持っています。代表的な構成要素は以下の通りです。

  • EMI除去フィルタ:ノイズを抑え、製品の電磁環境適合性(EMC)を確保
  • 整流回路:交流を直流へ変換
  • PFC(力率改善回路):電力効率の改善と高調波の抑制
  • 絶縁型 DC-DC コンバータ:絶縁を保ちながら必要な電圧へ変換
  • 各種スイッチング素子(MOSFET、ダイオード)
  • インダクタ・トランス

これらのブロックの最適化が、効率・発熱・ノイズなどの性能を決める重要ポイントです。


3. 設計者が部品を選ぶときの視点

各部品に対して、実際の設計に基づく選定基準を紹介します。

● EMI除去フィルタ

ノイズをどれだけ減衰できるかをdBで評価し、
「大電流」「低直流抵抗」「外形サイズ」などのバランスで部品を選びます。

整流回路のダイオード

逆耐圧(VRRM)・平均順電流(IF)・サージ耐量などを
入力電圧・負荷電流から計算して選択します。

● PFC回路のMOSFET・ダイオード

電圧・電流のピーク値、効率、スイッチング損失などを考慮します。
特に方式(CCM/BCM/DCM)によってピーク電流が異なる点がポイントです。

絶縁型 DC-DC の部品選択

フライバック方式、LLC方式などの各回路方式にそったMOSFET電圧マージン、
出力ダイオードの高速性、インダクタのインダクタンス・電流容量など、
安全性と安定動作のための詳細な規格が求められます。

各部品の数値はすべて、
入力電圧(VIN)、出力電力(POUT)、効率(η)などの仕様から導かれるため、
設計者は常に「仕様 ⇒ 部品規格」へ落とし込む思考をしています。


4. おわりに

スイッチング電源の設計は、多くの部品・方式・計算が関わる奥深い世界です。
しかし、その一つひとつを理解していくことで、機器の性能や安全性が大きく向上します。

サンシングループは、豊富な経験と知見をもとに、お客様の課題に対して最適なソリューションをご提案いたします。スイッチング電源に関してお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください!

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