電源ノイズ

電源ノイズの悪影響を抑えるには? 発生原因と対策方法を解説!

電源ノイズは機器の性能に悪影響を及ぼすため、設計段階で解決すべき重要な問題です。これらのノイズは内部や外部の様々な要因によって発生します。この記事では、電源ノイズの発生原因を詳しく説明し、ノイズフィルターの使用や電源管理、ケーブリングの改善といった対策方法を解説します。

電源ノイズとは

電源ノイズとは、電源回路から生じる不要な信号や干渉のことです。電源装置自体で発生するほか、外部からの干渉や接続された機器から発生することもあります。特にスイッチング電源では、スイッチングノイズ(高周波のリンギング)が発生しやすいです。一般に、電源ノイズには高周波ノイズやトランジェント(瞬時的な電圧変動)、リップル(波形の乱れ)などが含まれ、これらは電源ラインや信号ラインを介して伝播します。

電源ノイズは電子機器の性能を低下させる要因のひとつです。例えば精密測定機器においては、測定精度に悪影響を与えるおそれがあります。通信機器の場合は、ノイズによってデータの損失や転送速度の低下を引き起こし、通信エラーとなる可能性もあります。機器の誤動作や寿命短縮、破壊につながるケースもあります。

EMCの観点から、電源ノイズ対策によってEMIとEMSを実現させることが求められています。

  • EMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁環境両立性)
    その機器が発する電磁波が周囲の機器に影響を与えず、また、外部からの電磁波の影響も受けずに動作する性能のこと。
  • EMI(Electro-Magnetic Interference:エミッション/電磁妨害)
    EMI対策によって、ノイズの発生・放出を抑える。
  • EMS(Electro-Magnetic Susceptibility:イミュニティ/電磁感受性)
    EMS対策によって、外部ノイズの侵入・影響を防ぐ。

電源ノイズの発生原因

電源ノイズの発生原因は、主に内部発生源と外部発生源の2つに分類されます。内部発生源は電源自体や接続されたコンポーネントから生じるノイズで、外部発生源は電磁干渉(EMI)など、電源システムの外から侵入するノイズです。それぞれの原因について理解し、適切に対処することが設計者に求められます。

内部発生源によるノイズ

電源ノイズの内部発生源としては、スイッチング電源や汎用インバータが挙げられます。スイッチング電源は高効率である反面、高速でスイッチングすることによりノイズを発生させることがあります。このノイズは電源回路内の急激な電流変化で引き起こされるものです。また、異なるコンポーネント間での相互作用、特に高周波動作部品の近くに配置された感度の高い部品では、互いに影響を及ぼし合うことでノイズが生じます。これらの相互作用を把握し、回路設計時に考慮することが重要です。

外部発生源によるノイズ

外部からの主なノイズ源は、EMI(電磁干渉)と伝導ノイズ(電源線を通じた干渉)です。

EMIは他の電子機器や無線信号、産業用機器などから発せられる電磁波によって発生し、電源ラインやデータ通信ラインに影響を与えます。

伝導ノイズは、電源ライン自体や他の機器から混入するノイズです。多くの機器が共通の電源ラインを使用している場合などで、特定の機器で発生しているノイズが他の機器に伝わって影響を与える可能性があります。

これらの外部ノイズ源から電子機器を保護するためには、適切なシールドやフィルタリングが必要です。

電源ノイズの対策方法

電源ノイズへの効果的な対策をとるには、ノイズの測定と分析を踏まえたうえで、ノイズフィルターの使用や、電源管理とケーブリングの改善を検討します。電源ノイズの影響を最小限にすることで、電子機器の信頼性と性能保持に役立つでしょう。

電源ノイズの測定と分析

電源ノイズの測定方法には、スペクトラムアナライザーやオシロスコープ、パワーレールプローブを使用するのが一般的です。これらの機器を使って、ノイズの周波数特性や振幅を詳細に調べることができます。測定データは、ノイズの発生源や特性を特定するのに役立ちます。適切な分析・評価によってノイズ原因を特定できれば、より効果的な対策を講じることが可能です。

電源ノイズを抑える5つの方法

1)シールディング

シールディングとは、電子機器やケーブルを金属のシールドでカバーして、ノイズを吸収・反射させる方法です。電磁波の干渉を防ぎ、電子回路に悪影響を与えないようにします。

2)フィルタリング

フィルターの種類には、コモンモードフィルターやディファレンシャルモードフィルター(フェライトビーズや3端子フィルターなど)などがあり、ノイズの特性や機器の要件を考慮して選定します。

直流電流の電子機器では、コンデンサの周波数特性によってノイズを抑える「パスコン(バイパスコンデンサ)」の使用が一般的です。適切なフィルターの設置方法はノイズの発生源や伝播経路によって異なるため、事前の測定と分析が重要となります。

3)グランディング

グランディングは、電子機器の電位を安定させることです。これにより、電源ノイズの低減効果が期待できます。機器内の電流における電位差や静電気の発生を抑え、ノイズ要因を除去する対策です。機器の特性や状況によって手法が異なるため、設計者にはスキルと経験が求められます。

4)電源管理

安定化電源やリニアレギュレータを電子機器に組み込み、出力電圧が一定になるように制御します。供給電力のブレがなくなることで電子機器の動作が安定し、ノイズの発生を防ぎます。

5)差動伝送

差動伝送は、同じ信号を逆相で2つの信号線に流し、受信側で両者の電位差を利用して伝送する技術です。2つの信号線にノイズが加わったとしても、電位差を見ることでノイズが相殺され、誤作動を防ぎます。

6)ワイヤリング

電源ラインと信号ラインを物理的に離すことで、互いの干渉を避けることができます。また、磁束を打ち消し合うツイストペアケーブルもノイズ低減に有効です。