輻射ノイズ

輻射ノイズの問題を解決しよう|発生原因と対策方法をわかりやすく解説

輻射ノイズは、電子機器や電子回路から発生する電磁波の一種です。輻射ノイズの影響によって、電子機器の正常な動作を妨げる場合があります。特に高周波数で動作するデバイスを設計する際は、輻射ノイズの対策が不可欠です。本記事では、輻射ノイズの発生原因と、効果的な対策方法について詳しく解説します。

輻射ノイズとは

輻射ノイズは、電子機器や回路から放出される電磁波の一種で、空間を通じて伝播するノイズです。周囲の電子機器に干渉して、性能に悪影響を与えることがあります。

輻射ノイズの特徴

輻射ノイズは、電流が流れる導体から発生する電磁波であり、特に高周波数で動作する電子機器で顕著になることがあります。回路などを介する伝導ノイズと異なり、空間を通じて他の機器に到達し、信号や動作に干渉するのが特徴です。

伝導ノイズが存在している配線やケーブルがアンテナとなって、輻射ノイズが発せられます。さらに、輻射ノイズ発生源の周囲で反射や吸収が起こるため、さまざまなトラブル要因となることにも注意が必要です。

輻射ノイズの問題点

輻射ノイズは不要電磁波であり、電子機器の性能低下や誤動作を引き起こします。例えば、無線通信機器では受信障害の原因となる可能性があります。特に、精密なデータ処理を要求される医療機器や通信機器などでは、輻射ノイズによる干渉は重大なリスク要因になるといえるでしょう。輻射ノイズによる機器間の電磁干渉によって、システム全体の信頼性が低下してしまうケースも少なくありません。

また、EMCに関しては国際的な規格や法規制が定められているため、製品の輻射ノイズ対策を怠ると市場から排除されるおそれもあります。

※EMC:電磁両立性。電子機器が、自ら発生するノイズ(電磁波)で外部機器に影響を与えず、また他からのノイズで影響を受けずに動作する性能を指す。

輻射ノイズと放射ノイズの違い

「輻射ノイズ」と「放射ノイズ」は、どちらも英語の「Radiated Emission」の邦訳です。したがって、表記以外には両者に違いはありません。「放射」は「輻射」より平易で読みやすい漢字であることから、放射ノイズという呼称も広く使用されています。

そもそも、「Radiation」は明治時代に「輻射」と訳されて輸入された言葉です。戦後は「輻」が常用漢字でなくなったため、平仮名混じりで「ふく射」と表記するか、同義語の「放射」を使用するケースが増えました。一般的に、専門用語としては放射が、日常的には輻射が用いられています。

輻射ノイズの発生原因

輻射ノイズの主な発生原因は、電流の急激な変化や回路から出る高周波です。これらの動作は、電子機器や部品からの電磁波放射を引き起こし、輻射ノイズとして周囲の機器に影響を及ぼします。

輻射ノイズの発生源となる電子機器・電子部品

輻射ノイズの主要な発生源には、CPUやスイッチング電源、インダクタ、コンデンサ、プリント基板(PCB)、半導体IC、配線ケーブルといった電子部品が該当します。したがって、これらのコンポーネントを持つ電子機器もまた、輻射ノイズの発生源となります。

具体的には、テレビや電子レンジなどの家電製品、コンピュータとその周辺機器、携帯電話、無線LANルーター、産業用モーター、医療用MRIなどです。これらの機器の動作中に急激な電流変化が起こると電磁波が放出され、輻射ノイズとなってしまいます。

高周波数とスイッチングによるノイズ生成

すでに述べたとおり、輻射ノイズは特に高周波数で動作する電子機器やスイッチング動作を伴う回路において顕著に発生します。

例えば、高クロックで動作するCPUや無線通信機器は、電磁ノイズの典型的な発生源です。スイッチング電源やデジタル回路も電流のオン・オフを急激に繰り返すため、輻射ノイズが頻繁に発生します。これらの輻射ノイズは、他の電子機器の動作を妨害したり通信の信号品質を低下させたりするため、何らかの対策が必要です。高周波数やスイッチング動作が不可避の現代の電子機器設計では、ノイズの発生源を特定したうえで効果的な対策方法を検討しなくてはなりません。

輻射ノイズの対策方法

輻射ノイズへの対策には、シールディングやグランディング、フィルタリング、回路設計の最適化が重要です。これらの技術を適切に組み合わせることで、電子機器の性能を保護し、ノイズの影響を最小限に抑えることが可能です。

シールディング

シールディングは、電子機器やケーブルを金属製のシールドやケースで覆い、外部からの輻射ノイズの侵入や内部からのノイズ放出を防ぐ技術です。電磁波を物理的に遮断するため、内部から輻射ノイズの放出を防ぐと同時に、外部からのノイズの侵入も防ぎます。適切な材料の選択と設計により、ノイズの影響を大幅に減少させることが可能です​​。

グランディング

グランディングは電子機器の基準電位を安定化させることで、電位差によるコモンモードノイズの発生を防止する技術です。GND(グランド)は、シールディングやフィルタリングの効果にも影響します。

フィルタリング

フィルタリングは、不要なノイズを取り除くノイズフィルターを使用する方法です。EMIフィルター、あるいはラインフィルターとも呼ばれます。電源ラインや信号線に適用され、輻射ノイズや伝導ノイズの低減が可能です。ローパスフィルターやハイパスフィルター、バンドパスフィルターなど、対象とするノイズの特性に応じて使用するフィルターの種類が異なります。

回路設計の最適化

適切な回路設計もまた、輻射ノイズの発生を予防し、輻射ノイズの影響を最小限に抑えるために有効です。トレースの長さや幅、コンポーネントの選択と配置を工夫することで、効果的に電磁干渉を抑制します。ノイズ発生源の特定やレイアウトの設計に、時間と労力をかけることが重要です。

ライブに保存しました