伝導ノイズ

伝導ノイズとは|発生原因・対策方法・測定・分析の解説

電子機器の開発では、伝導ノイズをいかに抑えるかが重要です。電子回路内で不要な信号が伝播すると、機器の性能低下や機能障害を引き起こすことがあります。この記事では、伝導ノイズの基本特性から、発生原因、対策方法、測定と分析まで詳しく解説します。

伝導ノイズとは

伝導ノイズとは、電子機器内の回路を介して伝わる不要な電気信号のことです。電源ラインや信号線を通じて広がり、電子機器の性能を低下させる原因となります。ここでは、伝導ノイズの基本特性と、放射ノイズとの違いについて説明します。

伝導ノイズの基本特性

伝導ノイズは、主に電源ラインや接地回路、信号線を通じて伝わるノイズです。しかし、ノイズ自体はスイッチング動作などの電気的変化によって生じます。伝導ノイズは周波数によってスペクトルの振幅が異なり、その特性は使用する電子部品や回路設計に依存します。

伝導ノイズは伝わり方によって「ディファレンシャルモードノイズ」と「コモンモードノイズ」の2種類に分けられます。ディファレンシャルモードノイズは電源ライン間に発生し、電源の陽極側と陰極側での流れが逆向きです。コモンモードノイズは、電源ラインとアースライン間に発生し、電源の陽極側と陰極側で流れる向きが同じになります。この2つの伝導ノイズは、同一回路内で同時発生することもあります。

伝導ノイズと放射ノイズの違い

伝導ノイズと放射ノイズは、それぞれの名称のとおり伝播方法で区別されています。伝導ノイズが電気信号としてケーブルや回路を介して伝わるのに対し、放射ノイズは電磁波として空間を通じて伝播します。放射ノイズは、高周波数で動作する近年のデバイスでは特に障害になりやすいです。適切なノイズ対策を講じるために、伝導ノイズと放射ノイズの違いを理解しておきましょう。

伝導ノイズの発生原因

伝導ノイズは電子機器内のさまざまな要因で生じますが、主な原因は電源スイッチのオン・オフ動作(スイッチング)です。スイッチングによって電流が急激に変化するため、ノイズが発生します。また、高速動作するデジタル回路やマイクロプロセッサも、スイッチング時の電磁界変動によって伝導ノイズを生じさせます。

その他の発生原因は、電源ライン上のインピーダンスの不一致や、接地ループによる電位差です。近接したコンポーネントの相互干渉や、不適切な配線レイアウトによっても伝導ノイズが増幅されることがあります。これらの要因を理解し、対策を施すことが伝導ノイズの抑制に不可欠です。

伝導ノイズの対策方法

効果的な伝導ノイズの対策をするには、適切なコンポーネントの選択と回路設計の工夫が不可欠です。ただし、相応のコストもかかるため、許容できる範囲を定めてノイズ対策を検討しましょう。

ノイズ対策コンポーネントの選択

効果的な伝導ノイズの対策には、ノイズが発生しにくいコンポーネントの選択が重要です。ローパスフィルターやフェライトビーズ、バイパスコンデンサなどは、不要な高周波ノイズを抑制するのに有効です。また、コンデンサーは電源ラインのノイズをフィルタリングし、安定化に貢献します。さまざまなノイズ対策コンポーネントの特性を理解し、回路の要件に応じた構成にすることが求められます。加えて、各コンポーネントの周波数特性と容量も考慮することが重要です。

回路設計上の注意点

回路を設計する段階で、ノイズの発生と伝播を最小限に抑えるための配慮が必要です。信号線と電源線を離して配置することで、不要な相互干渉を防げます。ノイズが地面に逃げやすい回路設計も有効です。また、配線を短くしたりインピーダンスを上げたりすれば、コモンモードノイズへの対策にもなります。ノイズが発生しやすい高周波数の回路では、レイアウトによる影響が大きいことに留意が必要です。

伝導ノイズの測定と分析

伝導ノイズの測定と分析は、効果的な対策を講じるために不可欠です。測定には専用の機器を使用し、データの分析から対策を導き出します。

伝導ノイズの測定方法

伝導ノイズの測定には、スペクトラムアナライザーやオシロスコープ、ラインインピーダンススタビライザー(LISN)などの専用機器が必要です。これらの機器を使用して、電源ラインや信号線上のノイズレベルを計測します。正確な検証のためには、測定環境のノイズを低減して不要な干渉を避けることも必要です。

測定データの分析と対策への応用

測定されたノイズデータから、伝導ノイズの発生源とその特性を分析します。例えば、スペクトラムアナライザーを使用して得られた周波数スペクトルは、特定の周波数帯におけるノイズの強度を示します。この分析によって、ノイズの発生箇所や発生原因の特定が可能です。また、ノイズの時間的変化を追うことで、ノイズ発生の状況とパターンまで把握できます。これらの分析結果をもとに、適切なフィルタリング、シールディング、回路設計の改善など、具体的なノイズ対策を検討することになります。