放射ノイズ

放射ノイズを克服するには? 発生原因・測定方法・対策を解説!

放射ノイズは、電子機器の動作に影響を及ぼす可能性がある電磁波の一種です。EMCの観点から、製品開発では放射ノイズへの対策が欠かせません。この記事では、放射ノイズの基本特性から、発生原因と測定方法、効果的な対策手段までを解説します。

放射ノイズとは

放射ノイズは、電子機器から発生するノイズの一種です。機器内の電流の流れによって発生し、空間を通じて伝播します。特に高周波数を持つ電子機器では、このノイズが重要な問題となり得ます。

放射ノイズの基本特性

放射ノイズは電子機器から発生し、空間を通じて伝わる電磁波です。特に高周波数を持つ電子機器で問題になりやすく、性能低下や誤動作の原因となりえます。電源回路やデジタル回路のスイッチング操作から生じることが多く、ノイズ発生源から離れているコンポーネントにも影響を及ぼします。

放射ノイズと伝導ノイズの違い

放射ノイズと伝導ノイズは伝播する経路が異なります。放射ノイズは空間を通じて伝播するのに対し、伝導ノイズは電源ラインや信号ラインなどの導体を介して伝わります。伝導ノイズには、ディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズに分類できます。

放射ノイズと輻射ノイズの違い

英語の「Radiated Emission」は、日本語で「放射ノイズ」または「輻射ノイズ」と訳されます。同じ意味の言葉であるため、放射ノイズと輻射ノイズに表記以外の違いはありません。Webや書籍の技術解説では、どちらも広く使用されています。

放射ノイズの発生原因

放射ノイズは高速動作する電気回路で発生し、特にデジタル信号の急激な変化があったときに生じます。典型的なのはスイッチングレギュレータやDC-DCコンバータ、マイクロプロセッサ、ICデジタル回路などの高速スイッチングです。これらのデバイスに用いられるトランジスタ、ダイオード、インダクタ、インバータ、コンデンサは電磁波を放射する性質があります。

基盤の配線設計、あるいはケーブルの取り回しが不適切な場合にも、予期せぬ放射ノイズが出てしまう可能性があります。電子機器の設計段階で放射ノイズの発生を想定する必要があり、特に高周波数を使用する機器では注意が必要です。

放射ノイズの測定方法

放射ノイズの測定では、電波暗室やアンテナ、スペクトラムアナライザーまたは電磁波測定器(EMIアナライザー)を用いるのが一般的です。電波暗室を利用することで外部の電磁波を遮断して、内部で発生する電磁波のみを測定することができます。アンテナによって検知された電磁波は、スペクトラムアナライザーを使って周波数成分ごとに分析されます。

専用の測定器具を用意すれば、機器が発する放射ノイズの強度や特性を正確に評価することが可能です。近年では、より簡易な測定方法として、EMI/EMC測定(プリコンプライアンステスト)がおこなわれるケースもあります。完全な規格準拠試験よりも低コストで実施できるため、初期段階での設計の問題点を発見するのに役立ちます。

放射ノイズの対策

放射ノイズを抑制するための対策には、シールディング、グラウンド(グランド)ノイズ対策、フィルタリング、回路設計の最適化、そしてEMC対応部品の採用などの手法があります。これらの対策は、機器が発する電磁波を効果的に減少させることを目的としています。

シールディングとグラウンドノイズ対策

シールディングは電磁波を物理的に遮断する方法です。金属製のケースやシートで電子機器を覆うことで、放射ノイズの放出を抑えるだけでなく、外部からの電磁干渉も防ぎます。グラウンドノイズ対策は、電子機器の基準電位を安定させることにより、電気的ノイズの伝播を抑制し、機器の電磁両立性を向上させる方法です。放射ノイズ以外の電気的問題も防ぐため、機器の性能と信頼性を保つことができます。

フィルタリングと回路設計の最適化

フィルタリングは不要な高周波ノイズを排除するための技術で、特定の周波数範囲の信号を選択的に減衰させます。さらに回路設計の最適化によって、ノイズの発生源を減らすことが可能です。信号線や電源線のレイアウトを調整することで放射ノイズの影響を最小限に抑えられます。また、デカップリング(コンデンサを電源ラインとグラウンドの間に接続すること)は、電源ラインや信号ラインからのノイズを、効果的に分離する役割を果たします。

EMC対応部品の採用

放射ノイズを抑えるように特別に設計されているEMC対応部品の採用は、放射ノイズ対策に有効なアプローチです。例えば、低ノイズのスイッチングレギュレータ、ノイズ抑制用のコンデンサ、インダクタなどがあります。サンシン電機では、低ノイズ化に対応した「球状トランス」の設計サポートや試作品提供、 量産品販売をおこなっています。これらを適切に選択し使用することで、システム全体のノイズ放出量を減らすことができます。